小児スポーツ障害予防リハビリについて
現代の子供達には、運動不足による肥満と、多くの熱心な親や指導者による運動過多が原因のスポーツ障害という二極化現象がみられます。 小児期特有のスポーツ障害は、成長過程にある未成熟な運動器官のために、成人と異なる発症機序が存在します。そして、その障害が、成長軟骨という骨を長軸方向に伸ばす部分に及ぶと、生涯にわたり脚長差や変形が残存し、その後のスポーツ活動や日常生活に支障が出ることもあります。 そのため、発育期における運動器の成長の特徴や発症機序を理解し、その個々人の成長や発育に応じて、運動負荷やトレーニングメニューを組み立てることが大切になります。
発育期について
5〜8歳
5〜8歳までの間は、プレゴールデンエイジと呼ばれ、特に脳・神経系が発達する時期です。 そのため、身体のバランスや神経筋協調運動といった技術力を向上させるスキルトレーニングを主に行います。
9〜12歳
9〜12歳の間は、ゴールデンエイジと呼ばれ、呼吸器や循環器系の組織が発達するため、持久力の向上を目的とした心肺機能を中心とした訓練を主に行います。 しかし、この時期は、成長や発育など体格の個人差とそれに伴う能力や成績などの差が顕著に現れてくる時期でもあるため、その差を埋めようとオーバーユースになり、成長軟骨に過度の反復動作や強度負荷が加わり、骨端症や肉離れなどの障害が好発する時期でもあります。
13〜16歳
13〜16歳の間は、ポストゴールデンエイジと呼ばれ、ようやく筋肉や骨の成長が発達してくるため、筋力をつけるパワー訓練を開始することができます。 ただし、急激に身長が伸びる子供においては、相対的に筋肉や腱の短縮を伴い、筋緊張が強くなります。身体が硬くなる場合には、筋肉や腱実質の損傷が起こりやすくなるため、十分な弾力性を確保するストレッチ運動も同時に必要になります。 そして成長終了後に、荷重をかけた運動強度の高いトレーニングや運動の頻度や時間をかけて反復練習を行います。 成長の速度は個人差が多く、適切な時期に適切なトレーニングを行うことで、子供をスポーツ障害から守ることができます。
当院では、発育期におけるスポーツ障害を見逃さず、また将来に遺残させないために治療に全力で臨みます。