関節リウマチとは
関節リウマチは膠原病の一つで、全身の関節内において自己免疫性の炎症を起こす病気です。 原因が明確に特定されておらず、家族性に遺伝することや女性に多いことから、免疫系の複雑なネットワークにおいて、様々な遺伝的な要因が複合的に組み合わさってエラーが起こり、関節内の構成組織にアレルギー的な炎症が発生するものとされています。
関節リウマチの症状、治療
自然発生的に発症した炎症が持続すると、関節内において主に免疫の働きを担っている滑膜組織に炎症が広がり、滑膜組織からさらに炎症を活性化させる炎症因子が放出され、軟骨損傷や骨破壊、靭帯損傷から筋肉断裂など、関節の徹底的な破壊が進行します。
破壊の進行は、個人によって異なり、急性に破壊が進行するタイプから、何十年かけてゆっくり進行するもの、初期はゆっくりだったのが急に悪化していくものなど、花粉症などの慢性アレルギー疾患と似ており、継続した投薬加療による炎症のコントロールが基本の治療となります。
関節リウマチ治療の進歩
ほんの10数年前までは、炎症のコントロールにはステロイドという薬が中心でしたが、起きてしまった炎症に対する対症療法でしかなく、免疫異常そのものをコントロールできる訳ではないため、症状が強い方には投与量が多くなり、また副作用が非常に多い薬のため、内服コントロールには大変気を使う薬剤でした。 無効例も多く、関節破壊が進行したものに対しては手術的な治療を要する方も多かったのですが、すでにステロイドを大量に服用されていた方の骨は非常に脆く、骨粗鬆症になっているため、人工関節などの手術をしてもその生存率は低いものでした。 ところが、メソトレキサート(以下、MTX)という免疫抑制剤と生物学的製剤という、異常を起こした免疫システムに直接働く薬剤が登場して以来、医療者における関節リウマチという疾病概念が一変しました。 さらにここ2、3年でJAK阻害薬という新しい薬が登場し、その効果もかなり高く、関節リウマチの治療に幅と厚みをもたらしています。
関節リウマチは「早期発見、早期治療」
以前は慢性関節リウマチという疾病名称であったのが、慢性という頭文字が外され、慢性的に進行する疾患ではなく、治る病気、コントロールできる病気として患者さんに説明できるようになりました。
ただし、ここが大切なのですが、炎症が遷延し、関節が変形してしまうと薬では治せないため、現在の関節リウマチ治療における最も重要なポイントが「早期発見、早期治療」になります。
関節リウマチの検査時期
これまでは厳格な診断基準に基づいて関節リウマチの確定診断を行い、治療の開始となっていたため、ややグレーゾーン的な初期の関節リウマチの方の初期治療が遅れ関節破壊が進行する症例を数多く出してしまっていました。
今では大変有効で安全な薬があり、それをできるだけ活用するために、日本をはじめアメリカやヨーロッパのリウマチ学会では、たった一つの関節炎を認め、関節リウマチ疑いというだけで治療を開始するというガイドラインを作るに至っています。
関節リウマチの発症初期症状
発症初期には、手指や足の関節痛や朝のこわばり、むくみなど、皆さんが関節リウマチを疑う有名な症状の他にも幾つかあります。
日中は平熱にもかかわらず夕方以降に出現する微熱が続くといった不明熱と言われる症状や、いつの間にか誘引なく右肩痛が出現して、治ったと思ったら左膝痛が出て、次に右肘痛、といった複数の関節に痛みが出たり消えたりするなどの多関節痛といった所見も発症初期には良く見られます。 このような漠然とした症状を持つ方に血縁者にリウマチがいる方は、必ずリウマチの検査を受けていただければと存じます。もちろん血縁者におられない方も検査は無駄ではありません。
当院の関節リウマチの診断と治療
上で述べたように「早期発見、早期治療」が、その後の人生を決めてしまいます。
変形する前に治療を開始して、可能な限り関節破壊に至らないようにするのが我々リウマチ医の使命であると考えています。
家族歴、臨床経過、血液検査、関節エコーなどを駆使して、リウマチを疑う所見があれば即座に治療を開始してあげたいと思います。
そのためには、できるだけ、疑いだけでも当院に受診いただき、ご相談いただきたいと存じます。